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『クロウ/飛翔伝説』(94)、『アイ、ロボット』(04)、『キング・オブ・エジプト』(16)などで、圧倒的映像美により独自の世界観を描いてきたアレックス・プロヤス監督が1988年に手掛けた伝説のデビュー作が『スピリッツ・オブ・ジ・エア』である。制作に4年半の月日を費やし、壮大なロマンの物語を完成させた。『荒野の千鳥足』(71)の舞台となり、『マッドマックス2』(81)や『プリシラ』(94)の撮影地として知られる豪州ブロークン・ヒルにて撮影、登場人物はたった3人のみ。「空を飛ぶこと」への憧れを持つ男を軸に、《絶望》と《希望》、《夢》と《現実》の寓話を幻想的に描き出し、その世界観はセルジオ・レオーネ、アンドレイ・タルコフスキー、テリー・ギリアムらを彷彿とさせる。荒廃した近未来を想起させる美術と衣裳は、時代性を超越した造形とデザインで、我々の心を遥か彼方へと連れて行く。また、ピーター・ミラーによる印象的なサウンドトラックは、憧憬と哀愁を感じさせ、エンニオ・モリコーネやアンジェロ・バダラメンティ、さらにはミニマル・ミュージックで有名なフィリップ・グラスを想起させると高評価を得ている。
同年のオーストラリア・アカデミー賞にて最優秀美術賞・最優秀衣装賞にノミネートされたほか、第1回ゆうばり国際ファンタスティック映画祭にて審査員特別賞を受賞。91年には日本でも劇場公開され、レイトショーで12週間のロングランとなるヒットを記録するも、その後は長年に渡って観る事が難しい<失われた作品>として存在感を高めてきた。心に深い余韻を残すファンタジーの傑作が、今回ついに監督自身の手によるデジタル・リマスター版として、30年の時を超えスクリーンに帰ってくる。
果てしなく広がる荒野に一軒だけの小さな家に住む足の不自由なフェリックス。彼は手作りの飛行機によって空を飛ぶという妄想に取り憑かれ、いつかこの場所からの脱出を夢見ている。一方、偏執的な気質を持つ妹ベティは、この場所を一生離れてはいけないという父の遺言を忠実に守り、十字架に囲まれて暮らしている。そんな2人の生活の中に、ある日、スミスと名乗る逃亡者が現れる…。
1963年生まれ、エジプト出身、オーストラリア育ち。17歳でAFTRS(オーストラリア映画テレビ学校)に入学。当初はカメラマンを志望していたが、1年目で短編映画『Groping』(80)を制作、シドニー映画祭でGreater Union Best Film Awardに輝き、メルボルン映画祭で上映された。1982年ロンドン映画祭では最優秀短編映画賞を受賞、ヨーロッパでは上映されるごとにカルト的な支持を得ていった。その後、在学中に2本の短編を監督。
卒業後、友人のピーター・ミラー、ショーン・カリナンと共に製作プロダクションMeaningful Eye Contactを設立。クラウデッド・ハウスの「Don't Dream it's Over」、インエクセスの「Kiss The Dirt」などのMVやTV-CMを演出し、1987年ニューヨーク国際映画祭テレビゴールド・メダルなど多くの賞を受賞する。88年、初めての長編映画となる『スピリッツ・オブ・ジ・エア』を発表、1988年オーストラリア・アカデミー賞で最優秀美術賞・最優秀衣装賞にノミネートされ、1990年ゆうばり国際ファンタスティック映画祭では審査員特別賞を受賞。印象的な音楽と美術、「荒野で夢を追い求める者」というテーマが評判を呼んだ。
その後もスティングの「All This Time」などいくつかのMVを担当。コミックを実写化した監督第2作目『クロウ/飛翔伝説』(94)は、第21回サターン賞にノミネートされ、同年のファンゴリア・チェーンソー賞を受賞するなど一気に知名度を上げる事となる。ジェニファー・コネリー、キーファー・サザーランドなどを起用した『ダークシティ』(98)、『ガレージ・デイズ』(02)と順調にキャリアを築き、ハリウッド作『アイ,ロボット』(04)や『ノウイング』(09)、自身の出生地が舞台である『キング・オブ・エジプト』(16)という大作を世に送り出している。
イギリス出身。映画やTVドラマの制作スタッフとして働く傍ら、役者としては『パイレーツ・ムービー』(82)、『ヤング・アインシュタイン』(88)に出演。『スピリッツ・オブ・ジ・エア』出演後は、ジェーン・カンピオンのデビュー作『スウィーティー』(89)や、アレックス・プロヤス監督作『ダークシティ』(98)、『ガレージ・デイズ』(02)の2本にも出演した。
別名のノーマン・ボイドとしても活躍。1970年代初めからロンドンとシドニーの小劇場に立ち、ボードビルや政治演劇など様々なジャンルに出演。同時にラジオ局でも働き、ミュージシャンとしても活躍。
パリで不条理演劇に出演。その他、ジェームズ・ボーグルの短編『To Let』やTVミニドラマに出演、『スピリッツ・オブ・ジ・エア』で喜怒哀楽と衣装がめくるめく変わる妹、ベティ役を射止めた。
『ダークシティ』も『キング・オブ・エジプト』も、彼が創造した奇想世界はどれも観る者を胸躍らせる。
だが本作こそが、これらの起点にして豊かなる源泉。
そして常に、映画監督アレックス・プロヤスの“最高傑作”であり続けるのだ。
尾﨑一男
映画評論家&ライター
『クロウ/飛翔伝説』や『ダークシティ』の頃の初期プロヤス作品が好きだ。30年を経て、あの頃の奔放に飛翔する幻の長編初作品が劇場で公開される。いやはや、圧倒的なヴジュアルセンスと独特の世界観、アクの強いキャラクター達!オタクとアート、文学が混じり合った紛れもなく、僕が惚れ込んだプロヤスだった。また必死に羽ばたこうとするブレイク前の、商業映画で翼を焼かれる前の、若きプロヤス青年自身の姿とも重なる。やはりプロヤス・ファンとしては、新しい翼を得て飛び立つ彼の新たな“飛翔伝説”にも期待したくなる。
小島秀夫
ゲームクリエイター
灼熱の砂漠で、夢を見続けることだけが、〈希望〉という寓話が、30年前、すでに限界集落だった夕張市民へ、誕生したばかりの映画祭という夢を紡ぐ勇気を与えてくれた。
白銀の町、夕張での作品の受賞がきっかけで、プロヤス監督は夢の飛行機をハリウッドの地平線へと飛翔させていった。
そして、ゆうばり映画祭は、町が財政破綻しても、夢人間の〈希望の宴〉として継続し続け、今年、30周年を祝う!
小松澤陽一
ゆうばり映画祭創設プロデューサー
あの時代に存在した
あの時代にしかあり得なかった映像を
今スクリーンで観とどける人は
どうやって自分に置き換えて傷つくことが出来るだろう…
竹中直人
俳優/映画監督
今から四半世紀ほど前のこと、たまたま深夜のテレビで見たときの衝撃たるや!
それはもう忘れがたい経験でした。
この映画は私の原風景です。
森見登美彦
作家